「仕組みがないから進まない」と思っていた仕事を、自分で触ってみた
進まない理由を「仕組み」に置いていた
あるWebサイトの見直しが、長いあいだ思うように進んでいませんでした。
原因の一つとして考えていたのは、専門知識がなくてもWebページを作り、更新しやすくする仕組みがないことでした。
そうした仕組みを導入すれば、自分たちでページを作れる。文章や画像を変更するたびに専門的な作業を頼まなくてもよくなる。そうすれば、止まっているWebサイトの見直しも進むはずだ。
説明としては、かなり自然です。私自身、そう理解していました。
ところが、今ある環境を自分で触ってみたことで、その見方が変わりました。
サイト全体ではなく、一枚のページを作ってみた
既存の環境には、用途を限定すれば一枚のWebページを作れる機能がありました。
そこで、サイト全体を一度に作り直そうとするのではなく、まず一つのテーマに絞って、伝えたい内容を一枚のページにまとめてみることにしました。
こうしたページは「ランディングページ」と呼ばれます。商品やサービスの特徴、利用する場面、問い合わせまでの流れなどを、一つの目的に沿ってまとめたページです。
新しい仕組みを導入しなくても、今ある機能を組み合わせれば、考えていたページの一部は形にできました。
もちろん、一枚のページを作れることと、Webサイト全体を継続的に更新できることは別です。それでも、「新しい仕組みがないから作れない」と考えていた範囲の一部は、実際には作ることができました。
ここで私は、「Webサイトの見直しが進まない」という結果と、「簡単に作れる仕組みがない」という原因を、十分に確かめないまま結びつけていたことに気づきました。
作ってみると、別の問題が見えてきた
実際にページを作ろうとすると、仕組みとは別の問いに答えなければなりません。
誰に見てもらいたいのか。何を伝えたいのか。どの順番で見せれば伝わるのか。ページを見た人に、最後にどのような行動を取ってほしいのか。
こうしたことが具体的になっていなければ、ページを簡単に作れるようになっても、何を作るのかは決まりません。
Webページを更新しやすくする仕組みは、作業をしやすくしてくれます。しかし、そこに載せる内容や構成まで決めてくれるわけではありません。
仮に新しい仕組みを先に導入していたとしても、誰に何を訴求するのかが曖昧なままなら、Webサイトの見直しは進まなかった可能性があります。
「仕組みがない」という説明だけでは、止まっている理由を十分に捉えられていなかったのだと思います。
言葉だけでは、完成像の違いが見えなかった
もう一つ、作ってみて分かったことがありました。
それまで私は、作りたいページについて言葉で説明していました。誰に何を伝えたいのか、どのような構成がよいのか。言葉を重ねれば、関係者の認識もそろうと考えていたところがあります。
しかし、言葉だけを共有している段階では、それぞれが頭の中に違う完成像を持つことができます。
「分かりやすいページ」「商品の特徴が伝わるページ」と言っても、思い浮かべているものが同じとは限りません。その違いは、話しているだけでは表に出てきません。
そこで、完成品ではなくても、画面として見える叩き台を作りました。
すると、「ここはもっとこうした方がよい」「この情報が必要ではないか」と、反応が具体的になりました。
言葉が不要だったわけではありません。目に見える形ができたことで、同じ言葉をそれぞれがどう解釈していたのか、初めて話せるようになったのだと思います。
試作品は、原因を確かめる実験にもなった
作ったページは、完成へ近づくための試作品であると同時に、私が立てていた原因仮説を確かめる実験にもなりました。
今ある環境で一枚作ってみたことで、少なくとも三つの問題を分けて考えられるようになりました。
- Webページを作成・更新する仕組みの問題
- 誰に何を伝えるかという内容設計の問題
- 関係者が思い描く完成像の違い
それまでの私は、この三つを「仕組みがない」という一つの問題として捉えていたのかもしれません。
以前、定例資料を見直したときにも、表面的な返答だけで判断せず、実際の使われ方を確かめて、問題を分けて考えた経験がありました。今回も、実際に一つ作ったことで、初めて問題を分けて見られるようになりました。
だからといって、新しい仕組みが不要だと分かったわけではありません。
一枚のページを試作できることと、複数のページを継続的に管理・更新できることは別です。個人の試行錯誤に依存した状態では、担当者が変われば運用できなくなるかもしれません。更新する人や確認する人の役割まで考えれば、新しい仕組みが必要になる場面もあります。
今回変わったのは、導入の要否ではなく、検討する順番でした。
「仕事が進まない。仕組みがないからだ。では、新しい仕組みを導入しよう」と進む前に、今ある環境で一つだけ形にしてみる。
そこで、何ができて、どこで止まり、関係者がそれぞれ何を思い描いていたのかを見る。そうすれば、仕組みで解決すべき問題と、内容の設計や認識のすり合わせで解決すべき問題を、少しは切り分けられます。
次に「仕組みがないから進まない」と感じたときは、導入するものを探す前に、今ある道具で何を一つ作れるかを考えてみようと思います。
次回予告
次回は、少し数字を使った分析に取り組みます。
テーマは、PBR1倍割れです。同じ「1倍割れ」でも、利益を生む力が弱い場合と、利益は出ていても市場から成長を期待されていない場合では、見直すべきものが違います。
PBRをROEとPERに分け、公開されている数字から企業の課題をどこまで読み取れるのか。実際に数字を追いながら考えてみます。
