『熱狂的ファンのつくり方』を読んで、副業で引き受ける仕事の範囲を考える

副業で仕事をするとき、本業との違いを感じるのは、分担できる相手と、判断の根拠を説明する責任だ。

例えば、事業計画の実現可能性を調べる仕事がある。組織の中なら、法的な論点は法務、財務会計の論点は財務というように、専門の部門と分担して進められる。それぞれの担当領域で確認してもらい、その結果や判断を踏まえて、計画全体を考える。

副業では、同じように分担できる体制があるとは限らない。自分の専門ではない部分も、なぜそう考えたのかを根拠を持って説明する必要がある。ここをどう引き受けるかが、私にとって大変で、面白いところでもある。

顧客が求める範囲を、そのまま引き受けるのか

前回は、『熱狂的ファンのつくり方〈新版〉1分間顧客サービス』を読み、自分がやりたい仕事を考えた。

監訳者あとがきで、星野リゾートの星野佳路さんが示している概念図には、「自分のビジョン」と「顧客のニーズ」という二つの円がある。その上に、実際に提供するサービスの範囲が点線で描かれている。顧客のニーズのうち、提供範囲に入っていない部分もある。

顧客が望んでいることを知ったうえで、自分がどんなサービスを提供するかを選ぶ。自分が実現したいことと違う要望まで、すべて引き受ける必要はない。この図と説明を、私はそう受け止めている。

そこから自分の仕事を考えると、もう一つ確かめたいことがある。自分がやりたくて、相手にも必要とされている仕事について、どこまで根拠を確かめて説明できるかということだ。

「事業計画を支援します」と言っても、その中には、自分の経験で判断できることと、改めて調べなければならないことが混ざっている。

件数を減らしても、確認することは残る

もちろん、副業で使える時間には限りがある。ただ、時間が足りなければ、引き受ける仕事の量を減らすことはできる。

それでも、一件の仕事について必要な確認まで減るわけではない。本業で求められる水準まで持っていこうと思えば、分担できない部分を自分で調べ、判断の根拠を確かめる時間がかかる。

専門部門から判断を受け取るときにも、前提や理由を確認する。ただ、自分で調べる側に回ると、どこで迷い、何を確かめてその判断に至るのかを、より細かくたどることになる。

この判断で合っているのか。見落としていることはないか。説明するには何が足りないのか。そう考えて調べ、アウトプットする。

副業の大変さは、私の場合、この過程にある。

調べたことが、本業での会話に返ってくる

一方で、ここが学習意欲を駆り立てるところでもある。

本業では多くの仕事を進めるために、専門的な部分を担当部門へ任せ、そのアウトプットや判断を受け取る場面がある。分業するからこそ、それぞれの専門性を使って量をこなせる。

副業では、一件に時間をかけながら、自分でも調べて説明する。その過程で、受け取った判断を見るだけでは身につきにくかったことが、自分の中に残る。

それが本業にも返ってくる。財務や法務、ほかの部門の人と話すときに、自分で調べて考えた経験を使える。副業で取り組んだことが、本業の仕事を理解する材料にもなっている。

だから、専門外だからという理由だけで、最初から範囲を狭く決めたいわけではない。分からないことを調べ、自分で考えて説明するところに、私が仕事を面白いと感じる理由の一つがある。

ただし、調べて学べることと、その判断を自分だけで引き受けられることは分けておきたい。専門家への確認が必要な部分まで、自分で分かったつもりになってしまえば、相手にとって困ることになる。

本書を読んで残っているのは、過剰なサービスを約束せず、約束したことを一貫して提供するという考え方だ。

私がこれから具体的にしたいのは、自分で調べて説明するところ、専門家の確認が必要なところ、その結果を踏まえて自分が形にするところだ。学びながら仕事の範囲を広げたい。そのとき、相手にどこまでを任せてもらうのかも、曖昧にせず考えていきたい。

次回予告

次回は、資料の文字色を手がかりに、「強調を増やすほど、本当に強調したいものが消える」という話を考えます。重要な箇所に色を付けても、その範囲が増えると、どこを見てほしいのかが分かりにくくなる。普段の資料作成で感じる違和感から、何を強調しないかを考えます。

参考文献

ケン・ブランチャード、シェルドン・ボウルズ著、星野佳路監訳、御立英史訳『熱狂的ファンのつくり方〈新版〉1分間顧客サービス』。

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