数か月後の自分が、Excelの数字を説明できるようにする
財務資料をExcelで作るとき、セルに入っている数字の種類によって文字の色を変えている。
セルの中で計算した数字。直接入力した数字。別のシートから持ってきた数字。シミュレーションの前提として置いた数字。それぞれを見分けられるようにしている。
このルールは私のオリジナルではない。以前、Udemyの動画で知って、そのまま使い続けている。
最初は、Excelを作るときの作法の一つくらいに考えていた。
ただ、長く使っているうちに、私にとっては少し違う意味を持つようになった。
数字は残っていても、文脈は残っていない
以前作った財務資料を、時間が経ってからもう一度使うことがある。
そのとき困るのは、計算式そのものより、「この数字は何だったか」を思い出すことだった。
例えば、セルに100という数字が入っている。
別の計算から導いた100なのか、どこかの資料から転記した100なのか、とりあえずシミュレーションを動かすために置いた100なのかで、意味はかなり違う。
値だけを見れば、全部100だ。
資料を作った瞬間には、頭の中に文脈がある。
「これはこの資料から取った」「ここは仮にこう置いた」と覚えている。だから、その時点では困らない。
ところが、その文脈はExcelの中には必ずしも残っていない。
時間が経つと、自分で作った資料なのに「なぜここにこの数字を置いたのだろう」と、過去の記憶をたどることになる。
色を分けておくと、少なくとも最初の手掛かりがある。
これは計算された数字なのか。外から持ってきた数字なのか。それとも、まだ確定していない前提なのか。
それだけでも、昔の資料へ戻るときの出発点が変わる。
数字が合っていることと、説明できること
財務資料を作っていると、数字が合っているかは当然確認する。
計算式が間違っていないか。合計が合うか。前後の数字に矛盾がないか。
けれど、過去の資料へ戻る経験を繰り返すうちに、それとは別の状態があることに気づいた。
数字は合っている。でも、その数字が何者なのかをすぐには説明できない。
これは計算間違いとは違う。
誰かに引き継ぐ場合だけの話でもない。数か月後の自分も、作った当時の事情をそれほど覚えていない。
色を分けておけば、その数字の背景がすべて分かるわけではない。
どの資料から取ったのか。なぜその前提を置いたのか。いつ時点の数字なのか。そこまで必要なら、別に記録を残す必要がある。
色分けのルール自体を知らなければ、他の人には単なる色付きのExcelにしか見えないかもしれない。
だから、これで属人性がなくなるとは思っていない。
それでも私は使い続けている。
色の役割は、すべてを説明することではなく、後から調べ直すときに、最初にどこを見ればいいかを残しておくことだからだ。
資料を作っている最中には、その価値をあまり感じない。
その数字が何なのかは、自分が分かっているからだ。
価値が出るのは、自分が忘れたあとになる。
私は最初、この方法をExcel作成の作法として覚えた。
今は、数字そのものだけではなく、その数字がどんな種類の数字だったのかも一緒に残していると考えている。
過去のExcelを開いたとき、「この数字は合っているか」とは別に、もう一つ確認したいことがある。
この数字を、今の自分は説明できるだろうか。

